経営相談・支援事例
2025年11月、店舗を移転し、新たなスタートを切った「イノツチ洋食店」。その背景には、移転資金の確保に奔走した店主の情熱と、それを支え続けた京都商工会議所との歩みがあった。
![]()
連日の行列という突然のブレイクを追い風に移転を決断
商工会議所との付き合いは、コロナ禍にまで遡る。テイクアウトの増加やオンラインショップの売上拡大を目指し、補助金申請の相談に訪れたのが始まりだった。やがてコロナ禍が収束し、地元客を中心に来店客が増加。人気店となった同店に大きな転機が訪れる。2024年3月、著名なタレントが自身のYouTubeチャンネルで同店の人気メニューを紹介。動画は瞬く間に拡散され、連日、長蛇の列ができるようになった。
![]()
当時はカウンター6席の小さな店。いずれは広い店舗に移りたいと考えていた店主の井上正大さんは、この好機を逃すまいと移転を決意する。物件は、知り合いの紹介で偶然にも店舗の真向かいに見つかった。新たな設備の導入や改装工事には多額の資金が必要となることから、融資に向けた書類作成や移転計画の策定について、再び商工会議所へ相談を持ち込んだ。
![]()
希望額の調達へ向け、
商工会議所とともに組み立てた協調融資の道筋
担当の小林経営支援員(以下、小林)は、面談や聞き取りを重ねたうえで、日本政策金融公庫の「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」の利用を提案。さらに、井上さんの希望額を確実に調達するため、民間金融機関を組み合わせた「協調融資」の道筋を立てた。さらに、折しもイノツチが店舗を構えるエリアの支店に異動していた旧知の金融機関担当者を紹介。地域への理解が深いその人物は、面談前日には自ら足を運んで食事をし、店の雰囲気や集客状況を確認していたという。この姿勢に、井上さんは「運命的な出会い」を感じたという。
![]()
そこから3ヶ月間、小林との融資実行に向けた事業計画のブラッシュアップが毎週のように続いた。客層やメニュー構成、収支計画等、検討項目は多岐にわたったが、その精度を高めていった結果、希望通りの融資が決定。不安を抱える時期もあったというが、「“小林さんのお店”だと言っても過言ではないほど、細部まで一緒に考えてくれたからこそ実現した店舗だ」と振り返る。小林も「井上さんの店舗移転への強い想いや粘り強さ、そして何より、お店を二人三脚で続けてきた奥さんのサポートが大きかった」と当時を語る。
![]()
妥協のない事業計画書が結実 理想の店舗で新たなステージへ
相談開始から約1年。無事に融資が実行され、2025年11月に移転オープンを果たした。土の温もりを感じさせる壁はそのままに、天井を高くして開放感を演出。店舗裏に広がる寺院の庭を借景として取り込み、自然光が差し込む大きなガラス窓を設置した。テーブルや椅子は家具職人の友人に依頼し、一点もののオリジナル家具を誂えた。
![]()
こうした理想の店舗づくりが実現した背景には、経営の全体像を明確にした綿密な事業計画がある。移転にあたり、これまで少なかった家族連れや若い女性、高齢者層といった幅広い客層の来店を想定。ターゲットに合わせたメニュー開発も着実に進めることができたという。井上さんは「商工会議所の方々は、皆さんが本音で相談に乗ってくれるので信頼できる。どう進めるべきか悩む中、さまざまな方向性を示してもらえたことが非常にありがたかった」と話す。小林に対しても「感謝しかありません」と言葉を重ねる。小林もまた「何でも気軽に相談してもらえる関係性が大切。これからもコミュニケーションを重ねていきたい」と語る。イノツチの一ファンとして通い続ける小林は「今後は店内動線の見直しや、日々のオペレーション面の改善も一緒に考えていきたい」と身近な課題に寄り添う支援の継続にも意欲を見せた。
![]()
経営支援員より
中小企業支援部 洛北ビジネスサポートデスク 小林支援員
-
資金調達方法のひとつマル経融資制度は、小規模事業者にとって非常にメリットの多い制度です。今回の融資をきっかけに事業計画を策定され、移転を成功されたプロセスにご一緒できたことを、経営支援員として大変うれしく思います。

イノツチ洋食店
名物の鉄板ハンバーグで知られる人気洋食店。2025年11月に忍性寺の一角へ移転オープンし、広さが増した落ち着いた店内から庭を眺めながら食事を楽しめる。手間ひまかけた洋食ランチが評判で、デミグラスなど手作りソースも魅力。
| 所在地 | 京都市左京区新間之町通二条下ル頭町337-79 忍性寺北棟 |
|---|---|
| 営業時間 | 11:00~15:30(L.O. 15:00) |
| 公式アカウント | https://www.instagram.com/inotsuchi_yo_shoku/ |
