知恵-1グランプリ

地域とのつながりを大切にした「獣害防止ネット」の開発
近江屋ロープ株式会社

文化年間(1805年)創業以来、長い歴史の中で「たゆまぬ自己形成と社会への奉仕」を経営理念に掲げ、伝統的なロープや各種産業用資材・農林機械の販売を通して、顧客や取引先、従業員との〝絆〟を大切にする企業文化を育んできた。こうした社内のバックグラウンドから、今回のビジネスプランが生み出された。

近年、里山の減少などにより、野生動物が田や畑に侵入して農作物を荒らす獣害が増えつつある。生産者にとって切実な問題だが、現在のところ被害を防ぐ有効な手だてがなく、農村地域の生産力の低下や過疎化の一因になっている。こうした社会問題の解決を目指し、同社では金網や特殊繊維、電気柵を用途に応じて組み合わせた獣害防止ネットを開発。被害が大きい猪や鹿をはじめ、これまで対応が難しかった猿の侵入を防止する。

この獣害防止ネットの特徴は、持ち運びや組み立てが容易で、場所を選ばず自設が可能であるということ。工事業者の施工ではなく、住民が主体となって設置することにより、「自分たちで地域社会を守る!」という自助意識の醸成につなげる。今後、同社では設置後の破損や事故対応などアフターフォローを充実させ、地域の獣害対策を継続的にバックアップしていく。自社で養った絆を大切にする精神を生かし、コミュニティの再生と農林産業の活性化を促す。

農村地域の獣害だけでなく、山間地域の雪害対策や観光地区の鳥獣害対策など、未開拓分野で需要拡大のチャンスが広がっている。社会貢献度の高いソーシャルビジネスの一つのモデルとして、これからの展開に期待が高まる。


獣害防止ネット、名付けて「イノシッシ」。設置場所を選ばず、土地の形状に応じて利用可能。


自設可能な造りだが、さまざまな害獣の侵入を効果的に防ぐ。


■審査委員長の目:龍谷大学 教授 佐藤 研司

長い歴史を持つ老舗企業が、自社の優れた経営資源であるベテラン従業員と、これまで培ってきた市場との信頼関係に着目し、その接点に獣害防止ネットという今回の商品があると思われる。加えて、獣害に悩む地域との連携というソーシャルな側面も持っており、これまでにない新たな取り組みとして注目される。営利・非営利と区分けされてきた事業分野だけに、今後の施策展開の方策について十分な検討が求められる。

<企業情報>
近江屋ロープ株式会社
代表者 : 野々内 達雄
住所 : 京都市下京区七条通西洞院東入夷之町689
TEL : 075-361-2301
Web : http://www.ohmirope.co.jp/
<事業内容>
網製造業、その他金属製品製造業

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