知恵産業研究会報告書

第3章 京都企業の「知恵」の抽出

3.「京都企業の知恵」抽出結果

3.2 「新価値創造アプローチ区分」、「事業展開ステップ区分」別の知恵の使いどころ分析

図表24に整理した「知恵」を、まず「新価値創出アプローチ区分」に分け「事業展開ステップ区分」ごとの特徴を捉えると以下のとおりとなる。

特徴

  • 京都ブランドの価値は、より多くの製品を、より多くの販売チャネルから流通させることよりも、徹底した「質の高さ」へのこだわりに基づいた流通が優先されることである。時には、お客を待たせてでも、最高品質を得ることも必要となる。また、作り手と使い手が直接顔を合わせ、コミュニケーションギャップを減らすためには、販売チャネルの全国展開をしないという選択もある。流通販売段階においても、一貫して量よりも質を優先させた「高品質へのこだわり」が、ブランド価値の向上につながっている。
  • また、メジャーリーグのホームランバッターの○○号ホームランのボールが高額でオークションされるように、ある「モノ」を手に入れることで、その背景にある出来事などの「コト」を手に入れる満足感がその商品の価値を高める。
  • また、伝統工芸品に代表される京都の高品質な商品は、単に店に置いておくだけでは売れず、店員がその技、歴史などを説明しないとその価値が分かってもらえないという。商品を販売する際、付加価値が分かってもらえる工夫が必要である。
  • さらに、商品については、今まで黒子であった分野、工業製品に例えればいわゆる部品メーカー的な立場にあった企業が魅力ある最終商品を作り、知名度を上げブランド化をしている事例が見られる。

具体的事例

の事例

商品の持つストーリー性を語り価値を伝える

(株)ストリートベンダー

の事例

花のあるおしゃれな空間を見せてブランド作り

(株)プーゼフルール

販路拡大を進める中で海外での評価がブランド化に貢献

(株)日吉屋

メンテナンスやコストの情報開示によって安心を与えブランド化

京都インターナショナル(株)

商品と一緒に使い方や設置方法等の独自ノウハウを併せて提供

西清マテリアル(株)

の事例

カットしたネギを全国のラーメン店に直接販売

農業生産法人こと京都(株)

メーカー、卸売で学んだ商品をブライダル市場に投入する

(株)俄

の事例

まずブランディング、そして顧客の納得できる価格で提供

(株)岡重

の事例

既存企業と競合しない名刺作成事業への新規参入

(株)サンライズジャパン

他と競合しない独自の教育方針が関係者の関心を惹く

ジャパンリード(株)

の事例

業界常識を打破し、小売店における販売ネットワークを独自構築

佐々木酒造(株)

顧客の目にふれやすい立地への積極的な店舗展開

(株)エイラクヤ

地域・顧客層などターゲットを明確にした広告・販売戦略

(株)八代目儀兵衛

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