知恵産業研究会報告書

第3章 京都企業の「知恵」の抽出

4.京都企業の「知恵」の特徴

4.1 分析フレームワークから明らかになった京都商工業の知恵

垂直統合が、顧客からの信頼にもつながる技術開発型、
新たな分業ネットワークが活きる市場開拓型

「生産段階」では、技術開発型において特に、『垂直統合』が経営上のキーワードとして上げられる。これにより「強み」に気付き、その強みを高めていく技術力の向上を生み出す。ブランドや品質への顧客からの高い信頼に応えるための有力な知恵として、一貫生産を中心とした垂直統合が有効に機能している。

一方、市場開拓型では、従来のヒエラルキー型分業体制とは異なる、新たな分業ネットワークの知恵が生きている。それは、京都らしさの一つとも言える「お弟子さんネットワーク」の活用などに表れている。また、在庫リスクの負担と主導権の発揮を組合せた新たな分業体制を築いているケースもある。大量生産型ではない特徴を持つだけに、フレキシブルな生産や研究開発体制の確保は、京都企業の効率的経営に大きな価値をもたらしている。

このように、京都の技術型産業においては、スケールメリットを活かす「水平統合型」経営よりも、高い品質レベルやブランド価値を維持するのに有効な「垂直統合型」が採用されていることが特徴と言える。また、京都の伝統産業を中心とした職人による分業ネットワークも、新たな展開の時期に来ていると言えよう。

垂直統合が、顧客からの信頼にもつながる技術開発型、新たな分業ネットワークが活きる市場開拓型
伝統産業の新価値創造に多い「市場開拓型」、
ハイテク工業型に多い「技術開発型」

京都産業を大きく区分する上では、「伝統産業」と「ハイテク産業」の2つに分けて考えることも多い。この区分で考えて今回の調査から知恵の特徴を考察すると、伝統産業型企業における新価値創造成功事例においては「市場開拓型」のアプローチをとる事例が多く、ハイテク産業型企業においては「技術開発型」アプローチをとる事例が多い傾向が明らかとなった(ただし、伝統産業から出発し既に最先端産業として転換しているケースは、ハイテク産業としてみなしている)。このことは当然の結果であるものの、各産業タイプにおける新価値創造の基本的な考え方を示すものである。

以上、今回の知恵産業研究会の活動としてヒアリング調査を実施した30社余りの事業の知恵に関する分析結果を整理した。もちろん、各企業の全ての知恵を本報告に掲載しきれているわけではない。しかし、この作業を通じて、数多の知恵の結晶として存在する現事業の優位性を改めて確認できたと共に、それらの知恵を俯瞰することにより浮かび上がる「京都企業の知恵の特徴」を抽出することができた。

また、ヒアリング調査を重ねるほどに、京都は長年にわたり「知恵」を使って新価値創造を続け発展してきたまちであり、これからも新価値創造を進めていく素材・人材・知財に溢れたまちであることを確信することができた。長時間にわたる入念なヒアリングにご協力いただいた各企業のみなさまには、この場を借りて深謝申し上げたい。

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