知恵産業研究会報告書

第2章 京都産業の優位性分析

1.高付加価値経営を実現する工業型企業

1.1 製造業における京都市企業の優位性

(3)京都の製造業の業種多様性からみた特徴

京都の製造業における、もう一つの特徴として、京都市における製造業種の多様性の存在も挙げられよう。粗付加価値額上位の都市の多くにおいては、突出した業種による粗付加価値額あるいは製造品出荷額の偏りがある場合が多い。

たとえば、粗付加価値額第1位の豊田市が典型例として挙げることができる。豊田市における輸送用機械器具(すなわち、自動車産業)の粗付加価値額は、全体の90%を占め、この都市の産業は、自動車関連産業に集約されていることを示している。また、他の上位都市には鉄鋼や化学等の突出した産業構成比率を示している都市が見られる。(図表11)

これに対し、京都市の産業構成は、付加価値額で見ても突出した一業種による偏りは目立たず、業種の多様性が豊かであるということが言える。この「産業多様性」という特徴については、知恵産業都市の形成において、大きな優位性につながることが予想される。すなわち、京都における活力の高い企業が「共創(コラボレーション)関係」を構築して成功している事例が目立つが、単一業種中心の産業構成では、異業種の知恵から学ぶ機会を得るのが容易ではない。これに対し、業種多様性が確保された京都のような都市においては、異業種の知恵との接触機会を、自社事業の周辺に容易に獲得することができ、従来の発想からでは導き難い、新製品や新技術開発に結びつける活動をしやすいと考えられるからである。

昨今の地球環境保全において、生物多様性の確保が大きなテーマとして取り上げられている。生態系の確保や文化進化にも生物多様性が重要であるという考え方が背景にある。確固たる理論があるわけではないが、このような多様性の効用は、産業生態系の中でも重要であると考えられ、知恵産業都市京都の基本的インフラの一つとして特徴づけられると考えることができる。

図表11.都市 粗付加価値額の業種別構成(平成18年)

図表11.都市 粗付加価値額の業種別構成

出所:平成18年工業統計「市区町村編」データ(経済産業省経済産業政策局調査統計部)

閉じる