■地元おすすめ店情報誌「docoico(どこいこ)」の誕生

「doco-ico」は、ホテルに宿泊されるお客様に、地域の旬な情報、おすすめの飲食店の情報、周辺地図、テレビ番組表などを提供するフリーペーパーで、現在、京都をはじめ全国７地域で月間80万部発行し、約650軒のホテルに置いていただいています（2009年11月時点）。
2003年広告やメディアを扱う会社を創業し、当初は既存媒体の広告営業が主な仕事でした。創業して２年後、学生時代にホテルでのアルバイト経験があった私は、ホテル向けフリーペーパーの可能性を感じ、大阪で自分なりに考えたフリーペーパーを発行しました。すると大きな反響があり、2006年、「doco-ico大阪」として創刊しました。その後、「doco-ico京都」を創刊し、以降も神戸、東京、横浜、名古屋など発行地域を拡大してきました。

■ホテルで活用されるツールづくり

近年、ホテルでは人員やコストの削減を進めており、また人事異動も多く、宿泊客から地元飲食店等について質問されても、適切に対応できないことも多いようです。特に、最近急増している低価格帯のホテルでは、このような情報を十分にはお持ちでありません。テレビ番組表を新聞等からコピーして配布するホテルもありますが、著作権の問題があるうえ、毎日少なからぬ経費がかかります。そこで、それらの情報をフリーペーパーとして提供すればホテルの業務を合理化できると考えました。
「doco-ico」の掲載店舗は、ホテルスタッフが宿泊客に紹介している店舗を中心に選んでいるため、いわばプロに評価された店舗が多く、誌面の信頼を高めています。掲載店からすると、新聞広告のような大きな反応はありませんが、ホテルからの誘客は常時あり、旅行者の客単価は高く、十分な費用対効果があると評価をいただいています。
新聞のテレビ番組表には各地域の放送局名が表示されていますが、地域外からの旅行者にとって不慣れで、わかりにくさがあります。「doco-ico」ではオリジナルのテレビ番組表を作成し、系列局名も書き加えるなど、きめ細やかな工夫を積み重ねています。

■ホテルと店舗をつなぐコミュニケーション・ビジネス

当社のサービスの根幹は、地元店舗の販促活動のサポートであり、フリーペーパーへの広告掲載はその一手段でしかありません。例えば、現在、「doco-ico京都」はA４版８ページで、掲載店の数も８ページで収まる範囲にしていますが、これは掲載店を増やすと各店舗のメリットが相対的に小さくなってしまうからです。
むしろ、当社では、広告掲載だけでなく、さまざまな方法で、ホテルと掲載店をつなぎ、それぞれのサービスを高めることを目指しています。例えば、当社内に全掲載店舗のパンフレット・メニュー表等を常備し、毎月、各ホテルにどの店舗の資料が必要かを聞いたうえで郵送しています。当社の仲介で、掲載店がホテルのスタッフを自店に招待し、試食してもらうこともあります。ホテルスタッフは率直な感想を飲食店に伝えることで、サービスを向上することができます。
2008年には「美食通」というガイドブックを発行し、グレードの高い名店を厳選して、ホテルのコンシェルジェ向けの情報誌として全国のホテルに提供しています。東京のホテルでも関西の名店の情報が手に入るということで、大変重宝がられており、今後も伸びシロのある分野と期待しています。
ホテル、掲載店と充分なコミュニケーションを取り、小さな工夫を積み重ねて、丁寧な情報提供を行っていく。それが当社の強みであり、多くの手間を要するため、大手が参入しにくい分野だと考えています。

■今後の課題

「doco-ico」の発行地域も順調に拡大し、各地から引き合いもあります。既存ホテルからの紹介で、設置先もどんどんと増えてきました。今後は、各地の広告代理店との提携などによって、２年間で50エリアまで拡大したいと考えています。「doco-ico」は全国展開可能なビジネスモデルとなりましたが、将来も同じモデルが通用するわけはなく、新たなサービスを創っていくつもりです。
2011年にテレビのデジタル放送が始まり、紙媒体のテレビ番組表のニーズは大きく低下することは必至で、発行エリアを拡大するとともに、テレビ番組表に代わる何らかの付加価値を見つけることが不可欠です。既に「英語版doco-ico」を発行していますが、増加し続ける中国人観光客への対応も重要なテーマです。
今後も観光客が欲しい情報を丁寧に発信し京都だけでなく全国各地の活性化に貢献したいと思っています。

<企業情報>
株式会社どこいこ　　代表取締役　　西村　康浩　氏　
〒600-8471　京都市下京区四条通西洞院東入新釜座町716-1　四条平野ビル701
TEL 075-257-3236 URL　http://www.doco-ico.net/
事業内容：広告媒体事業の企画・制作・運営、デジタルメディアコンテンツ制作およびサポート
役員3人、社員5人、アルバイト7名  売上高　1億2000万円
月間発行部数※　doco-ico大阪：約13万部、同京都：約10万部、同神戸約6万部、同東京約16万部　ほか
※一ヶ月に計16版発行される同誌の合計発行部数。　内訳:テレビ番組欄版(隔日発行)計15版／月、インフォメーション版(テレビ番組表なし)1版／月

[我が社のチャレンジ001 ] 株式会社どこいこ　代表取締役　西村康浩さん