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[我が社のチャレンジ002] 友禅染の型紙彫刻技術を成長分野に生かし、社会に提案する/株式会社キョーテック 代表取締役 佐野聡伸さん


■世の中にないものを出していく

弊社は1933年に友禅型紙の彫刻業として創業し、伝統技術をスクリーン型へと引き継いで、1950年代半ばには日本のスクリーン型製造業のトップクラスまで成長しました。内装用化粧板の製造に乗り出したのは1960年代からで、当初は大型船舶向けが中心でした。優れた耐水性や耐久性を兼ね備えた壁材を開発し、長年を掛けて蓄積した2万点余の友禅柄を生かして多様な意匠を用意したところ、当時、そのような壁材は弊社以外にはなく、大きな支持を得て、船舶向け内装材では国内シェア80%を確保するに至りました。
1970年代には住宅関連分野へ進出しました。インクを重ねて多層的に印刷できるスクリーン印刷の特徴を生かせば、立体的な表面加工、UV塗装なども可能であり、独自の意匠や美しさだけではなく、不燃化や傷がつきにくいという機能性を付加することもできます。その結果、次第に住宅や家具、キッチン、商業施設などの幅広い分野で当社製品が採用されていきました。
challenge002_kyotech_pix02.jpg 創業以来の社憲が「創意工夫、技術練磨、未来創造」で、常に「世の中にないものを出していく」という姿勢を明確化しています。全社員の1割強が技術研究やデザインなどの新製品開発に当っており、これは弊社のような中小企業としては異例なことです。彼らが中心となって、毎月、新製品づくりの会議を開き、アイデアを出し、メーカーなどの得意先へ積極的に企画提案しています。2003年からは企画提案力を更に強化するため、亀岡工場に展示場を開設し、毎年、顧客向けに新商材の内覧会も開催しています。


■世界唯一の連続印刷方式によるPTCヒーター

内装用化粧板などの建材製造(インテリア事業)が当社の第1の柱。基盤製造などの電気関連事業(テクノプリント事業)が第2の柱で、プリント電子基盤等の生産を行なってきましたが、息が短く薄利なため、建材分野で床暖房に注目し、現在、2003年に商品化したPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒーターに注力しています。
challenge002_kyotech_pix03.jpg PTCヒーターとは、特殊なインクで印刷した厚さ0.3mm程度の薄いヒーターで、最大の特徴は自己温度調整機能です。温度上昇に伴ってインクに含まれるポリマーが膨張し電気を遮断、発熱量を抑制することで、ヒーターの温度上昇を抑えるという機能を備えています。サーモスタットなどの制御装置は不要なうえ、熱源の面全体で温度調整されるため、安全性やコスト面で非常に優れています。例えば、電熱線方式の床暖房の床面に物を置いておくと、その部分に熱がこもり、必要以上の高温になりますが、PTCコーターでは温度が上昇すると該当箇所は通電しなくなり、温度が一定に保たれるうえ省エネにもなります。面としての通電のため電磁波もほとんど発生しません。PTC以外の電気式床暖房システムに比較すると価格が割高であることは否めませんが、安全性や省エネ性能を評価いただき、大手住宅メーカーでの採用も進みつつあります。ここ1ー2年は急速に売上が伸び、電気式床暖房で採用されるヒーターの国内市場の1割を超え、市場に対して影響力を持つようになりました。
また、印刷方式で生産するため、多様な形状のヒーターの製造が可能で、部屋に応じて多様な形状の床暖房を提供できます。その他の用途では、自家用車の座席ヒーター、大手外食チェーンの保温器などで採用されており、現在も多くの引き合いがあります。
PTCインクの取り組みは、20年ほど前からあったのですが、安定した品質を確保することはどこも実現できませんでした。弊社では、インテリア事業が好調だった頃から、塗料メーカーと共同で、均一な厚みでインクを刷る技術を研究開発し、商品化までに7ー8年の期間を要しました。当社は1985年に超精密プリント電子基盤の生産体制を確立し、均一な厚さでカーボンインクを連続してエンドレスに印刷する技術の蓄積があったため、連続印刷方式のPTCヒーターが実現できたのです。この生産技術は、世界で唯一の技術で、他にはありません。


■小ロットで独自性のある商品の開発

スクリーン印刷はスケールメリットを出しにくいのですが、小・中量生産に適したフレキシブルな生産方法です。そこで、船舶用化粧材や建築建材においても、電子回路やPTCヒーターにおいても、顧客ニーズに即して小ロットでの生産できるよう生産設備を整えてきました。大きなロットの汎用品では価格競争になりがちですが、小ロットで独自性のある商品を提供できれば、価格競争を避けることができ、また利益率を高くできます。そのため中国など海外での生産は考えず、国内生産を強化していくつもりです。色素増感型太陽電池、燃料電池の電極など、スクリーン印刷の特性を生かせる成長分野は、他にもあるでしょう。


■今後の課題は、成長分野での第3の柱の確立

急激に不景気になった前期を除けば、ここ5年間ほど毎年売上げ約1割増を続けてきました。建材とPTCヒーターなどの電気関連分野が、現在の当社の事業の2つの柱となっていますが、今後ドラスティックに第3の柱を開拓したいと考えています。ここ1ー2年のうちに設備導入するつもりで、ニッチとともに、大きな市場も狙っていきたいと思っています。


<企業情報>

株式会社キョーテック 代表取締役  佐野 聡伸 氏 
〒600-8814 京都市下京区中堂寺庄ノ内町39番地
TEL 075-311-6521 URL http://www.kyolite.co.jp/
事業内容:内装用化粧板、プリント基板、PTCヒーターなどの製造
株式会社キョーテック・グループ 従業員130人、 売上高 約65億円

 
[我が社のチャレンジ002] 株式会社キョーテック 代表取締役 佐野聡伸さん

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