Q 御社の事業内容を教えてください。
寺井さん もともとは祖父の代から、素材選びから製造工程の全てを手作りで一品一品仕上げる、誂呉服を生業にしていました。和服を着る機会が少なくなるにつれ、呉服業界が低迷していき、このままではいつか立ち行かなくなると思い、今まで培った技術を使い、何か新しいことが出来ないかと思い始めたことが、呉服制作の技法をデザインに取入れた革製品の製作でした。
Q 呉服の製法と革製品の組合せは、不思議な感じがしますが。
寺井さん 革に直接、絞り技法を施しています。透かし彫りにした革素材と金襴や縮緬などを組み合わせ、オーダーメイドでバックや財布などを製作しているほか、キーホルダーなど革小物も作っています。顧客からの依頼のみで制作・販売していましたが、2年前に自社ブランドを立ち上げ、工房の一角を販売店舗に改装し、販売形態を広げました。
Q 京商を活用するきっかけについて教えて下さい。
寺井さん 販売店舗の開設がきっかけです。それまでは、顧客から注文をいただいてからの制作だったため、店舗を経営するということがありませんでした。また、お客様と接する機会も少なかったため、どういった店舗作りにすれば良いのかも分からず、販路開拓も含めて、店舗の運営について相談しようと、京商を訪れました。経営支援員からは、お客様が店に入りやすい仕掛け作りや商品の陳列方法など、自分たちだけでは気付かなかった点についてアドバイスをもらい、そのアドバイスをもとにお客様目線の店作りを目指しました。
Q 販路開拓や商品開発のために展示会などにも出展されたと伺いましたが。
寺井さん これまで商談会や展示会といった場に出たことがなかったため、初めて展示会に出展した際には、客層や価格帯などを考慮せずに、自分たちが売りたい商品を持って行ってしまいました。それまでは、オーダーメイドで注文されるお客様ばかりであったため、お客様のニーズに合った提案がいかに大切かということに気づかされました。こうした経験をもとに、販売層のターゲットを絞り、ターゲット層に合う商品開発を行い、その後の展示会での出展で手ごたえを感じました。
Q 今後の目標を教えて下さい。
寺井さん 当社の製品は、一点一点が手縫いのため、多く作ることができず、また、全く同じ商品を作ることができないことが弱みだと捉えていました。けれども経営支援員からのアドバイスで、それを弱みと捉えずに、「一つとして同じものがない」という強みに捉え、同じ柄でロット数を求める仕入店に対し「一点もの」として提案するなど、自分たちの思いと市場のニーズのすり合わせ方について、この2年で少しづつ経験をつんできました。これからも、自分たちの商品の魅力を多くの方たちに、京商の支援事業を活用しながら伝えていきたいと思います。
令和元年度 伴走型小規模事業者支援推進事業
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